第6回 美容室の現状の分析-2
Ⅲ【SWOT分析】
Ⅲ‐ⅰ SWOT分析とは
「SWOT分析」とは、主に企業(お店)のマーケティング戦略や経営戦略立案で使われる手法で、
・強み(Srengths)
・弱み(Weaknesses)
・機会(Opportunities)
・脅威(Threats)
の4つの視点から、
「現時点での、企業(美容室)の置かれている環境を明確に把握する」
そして、その結果から
「美容室マーケティングや経営戦略の方向性を明確にする」
手法です。
この「環境」は、「経営環境」とも呼ばれ、大きく二つ
1.外部環境
2.内部環境
に分けられます。
1.外部環境とは、法律や景気、競合他店の動向など「こちらからは何ともならない」環境のことです
この外部環境を、自社(自店)にとって好影響を及ぼすものと悪影響及ぼすものとに分け、
好影響を機会(O)、悪影響を脅威(T)と呼びます。
2.内部環境とは、自社(美容室)の人材や資本、設備といった環境のことで「経営資源」とも呼ばれ
ます(この「経営資源」には一般に「ヒト、モノ、カネ、情報」の4つが挙げられます)。これらは
「ある程度までは、経営者の思い通りにできる」環境であるといえます。
この内部環境を、上記と同じく好影響と悪影響に分け、好影響を強み(S)、悪影響を弱み(W)
と呼びます。
Ⅲ-ⅱ 美容室にSWOT分析を用いるメリット
「SWOTとは何か大体理解できたけれど、それで何のメリットがあるの?」
という感想を持たれているかもしれません。
ここで、この疑問について触れておきたいと思います。
SWOT分析は一般に「どこで戦うか」を決める手法として用いられます。
ここでいう「戦う場」とは、お店の場所のことではなく「若者向け」であるとか「働く女性向け」
であるとかいった、「美容室のターゲットとする市場」のことです。(この「ターゲットとする市場」はお店によっては、複数の場合もあります。)
言うまでも無く、想定するお客様が「若者」と「働く女性」とでは、お店のデザイン、接客の方針、
宣伝のために広告を出す雑誌など、あらゆる運営の仕方が変わってきます。
この「ターゲットとする市場」が明確に決まっていなければ、お店の運営は、方向性の定まらない
ものになってしまいます。「働く女性」をターゲットにしているはずのお店が、少年誌にお店の広告を
出す、といった笑い話のようなことも起こりかねません。これでは、資金や時間が有効に活用でき
できているとは言い難いものです。
つまり、SWOT分析は、「美容室経営の方向性が定まらない状況に陥らないため」の手法として非常に有効です。 また、同じ理由で、「積極的に攻めに出るため」の手法としてもよく用いられます。
こうした理由から、SWOT分析はお店の経済合理性を高める上で非常に有効であるStockは考えます。
Ⅲ-ⅲ SWOT分析の流れ
それでは、SWOT分析の流れを、具体例を挙げながらご説明します。
行っていただく作業は、A・Bの二段階になります。
A:美容室経営環境(外部環境・内部環境)の洗い出しB:美容室経営の方向性の明確化
4ページ目に分析用シートをご用意していますので、書き込んでみてください。
実際に分析を行う場合は、従業員の方も含め、できるだけ大人数で行うことをお勧めします。
オーナー様お一人では、どうしてもご自身の主観が入ってしまい、普段見たくないと考えている
「弱み」や「脅威」を、軽めに書いてしまいがちです。また、ご自身の気づいておられない「強み」や
「機会」も出てくるかもしれません。
A 美容室経営環境(外部環境・内部環境)の洗出し
まずは、経営環境を列挙します。
上記のとおり、経営環境は大きく2つ「外部環境」「内部環境」に分けられます。
これを、具体的に挙げ、好影響・悪影響に分けていきます。
実際にやってみる場合は、とにかく、美容室経営に影響すると思われる事柄を思いつくままに書き出し、意見が出尽くしたところで、
・外部環境(機会・脅威)、内部環境(強み・弱み)の判別
・外部環境の好影響(機会)・悪影響(脅威)、内部環境の好影響(強み)・悪影響(弱み)の判別
と進んでいって下さい。
外部環境:「こちらからは何ともならない」環境
(例)外部環境
高齢者人口の増加・若年者人口の減少・徒歩圏内に住宅街・地域内に競合店が多い
→機会(好影響):高齢者人口の増加・徒歩圏内に住宅街
脅威(悪影響):若年者人口の減少街・地域内に競合店が多い
内部環境:「ある程度までは、経営者の思い通りにできる」環境
(例)内部環境(経営資源)
新規顧客が少ない・リピーターの割合が高い・地域住民の顧客が多い・スタッフが育たない
→強み(好影響):リピーターの割合が高い・地域住民の顧客が多い
弱み(悪影響):新規顧客が少ない・スタッフが育たない
B 美容室経営の方向性を明確化する
Aで洗い出した4つの視点から、方向性を明確化します。
「機会・脅威」「強み・弱み」を組合せることで4種の方向性が導き出されます(図参照)。

①強み(S)と機会(O)の組合せ:美容室経営の積極的攻勢
「自社(自店)の強みを活かして、美容室に取り込むことのできる事業機会は何か?」
を考えます。
この組合せは、最も「積極的な攻め」に適した分野であり「最大のチャンス」です。
現在実行している、強みの部分を拡大していく方向性をとるのが一般的です。
この分野の可能性を最大限に活かすことをまず考えましょう。
②強み(S)と脅威(T)の組合せ:美容室経営の差別化戦略
「自社(自店)の強みで、回避できる脅威は何か?」
「競合他社には脅威でも、自社(自店)の強みで事業機会にできるものは無いか?」
を考えます。
この分野では、脅威を避けるため、強みを活かして他店との差別化を図ります。
③弱み(W)と機会(O)の組合せ:美容室経営の段階的施策
「自社(自店)の弱みで、事業機会を取りこぼさないためには、何が必要か?」
を考えます。
この分野では、機会を活かすため、弱みの克服を図ります。このため、急激な成長は
見込めず、段階的に戦略を改定していくことになります。
④弱み(W)と脅威(T)の組合せ:美容室経営の専守防衛または撤退
「弱みと脅威の組み合わせで、最悪の事態を招かないためには何が必要か?」
を考えます。
この分野では、最悪の事態を想定し、それを回避するための方策を考えます。この組合せは、
最も対応が困難な組合せであり「最大の脅威」です。この分野には「回避」「撤退」といった
方向性をとります。
Ⅲ-ⅳ 得られた美容室分析結果について
お気づきのように、SWOT分析では結果として①~④の4つの方向性が出てきます。
この方向性から、具体的な美容室の「目標の設定」や「戦略の策定」を行います(第八回以降の講座でご紹介する予定です)。
これら①~④の分野は、もちろんどれも重要ですが、やはり、
・①美容室の強み(S)と機会(O)の組合せ:「最大のチャンス」
・④美容室の弱み(W)と脅威(T)の組合せ:「最大の脅威」
への対応を最優先します。
そして、資金や時間にゆとりが見込めた時点で、他の2つの分野にも対応していきます。