第5回 美容室の現状の分析
Ⅲ美容室経営【財務分析の具体例】
Ⅲ‐ⅰ 美容室財務分析の具体例
それでは、実際の方法をご紹介します。
以下に、「①収益性」「②利益率」「③人件費」「④安定性」分析の具体例をご紹介します。
以下①~④の各項目内で示している「業界平均値」の値は、
「中小企業の財務指標(中小企業庁編)」からの抜粋で、平成15年度の
国内「美容業」「理容業」における実際の調査結果
です。
ですから、この業界平均値との比較によって、
実際の全国的な位置づけが判断できる
ことになります。
準備
ご用意いただくのは
- ・決算書(過去3年分程度が望ましい)
- ・計算機(もちろんエクセルなどの表計算ソフトでも構いません)
- ・分析シート(ページ4をプリントアウトしてご使用下さい)
だけです。
分析作業(前ページⅡ-ⅳ「財務分析の流れ」参照)
A 決算書からの比率計算
決算書から、「比率分析」のための比率計算を行います(過去3年分)。
計算方法は、以下①~④の具体例の中に「計算方法」として記載しております。
まず、「計算方法」を参考に、決算書から各比率を計算し、分析シートの空欄を埋めてください。
B・C 計算結果の比較
Aでの計算結果を、
B 「自社(自店)の過去実績値」(「今年」と「前年」「前々年」を比較)
C 「業界平均値」
と、それぞれ比較します。
この際、分析シートの下半分にあるグラフに、Aで計算した各数値の点を取り
(①~④の分析例参照)、グラフを作成して下さい。
D・E 比較結果からの分析
自店の「改善すべき問題点」を明らかにします。
(①~④各項目内の「分析例」をご参考下さい)
①「収益性」:お店(美容室)の「収益性」を見る
総資本対経常利益率(ROA)
分析内容:経営活動全体からの収益性を分析する。
一般によく用いられる分析で、事業に投入した資本に対して、
安定した利益がどれくらい得られているかの指標になります。
計算方法:「経常利益」÷「資本合計(総資本)」×100(%)
(例) 9,060÷230,225×100=3.9・・・ ⇒ 3.9%
| 従業員数 | 美容業 | 理容業 |
|---|---|---|
| 1~5人 | 0% | -0.9% |
| 6~20人 | 0.4% | 0% |
| 21~50人 | 1.3% | 0.9% |
| 51人以上 | 1.7% | 0.3% |
| 全体平均 | 0.4% | -0.3% |
※数字(人数)は調査対象となったお店(企業)内の従業員数を表しています。
①「収益性」分析の例
「美容業」にて「6~20人」の店舗の場合
自店の過去実績例
前々年 0.42%
前年 0.37%
今年 0.27%
業界平均 0.4%
分析例
→悪化傾向である。加速的に悪化していると言える。
業界値より悪い値である。
→改善が必要である。
→どこが悪いのか、「資産が過大」「売上高が過少」の観点から明らかにする。
(この段階では「実数分析」を行い、どちらか、もしくは両方の数値を問題視することになります)
→改善目標を設定(第八回講座にて紹介する予定)し、改善のプロセスをまわす。
②「利益率」:美容室の売り上げ中の「利益率」を見る
売上高対営業利益率
分析内容:売上高に対して、利益がどれくらい得られているかの指標です。
値が高いほど、いわゆる「利益率」が高いといえます。
低い場合は、「人件費・管理費といったコストが過大である」、または
「売上げ自体が低い」可能性があります。
計算方法:「営業利益」÷「売上高」×100(%)
(例)「表1」からの実数での計算例
11,880÷192,209×100=6.18・・・ ⇒ 6.2%
| 従業員数 | 美容業 | 理容業 |
|---|---|---|
| 1~5人 | 0.2% | -0.4% |
| 6~20人 | 0.4% | -0.1% |
| 21~50人 | 1% | 0.7% |
| 51人以上 | 0.7% | 1.2% |
| 全体平均 | 0.4% | -0.1% |
※数字(人数)は調査対象となったお店(企業)内の従業員数を表しています。
②「利益率」分析の例
「美容業」にて「1~5人」の店舗の場合
自店の過去実績例
前々年 0.2%
前年 0.05%
今年 0.3%
業界平均 0.2%
分析例
→自店値の変化:悪化→改善傾向である。
業界値との比較:業界値より良い値である。
→早急な改善は必要ない。
→しかし、値が上下し「安定していない」ことがわかる。
→「実数分析」を行い、「売上げ」「管理費・人件費などのコスト」に問題がないかを見る。
③美容室の「人件費」を見る
売上高対人件費比率
分析内容:売上高に対して、人件費がどれくらいの割合を占めるかの指標です。
これは低い方が良い値となります(一概には言い切れませんが)
値が高い場合、「人件費が過大」「売上げ自体が低い」可能性があります。
計算方法:「人件費」÷「売上高」×100(%)
(例)「表1」からの実数での計算例
53,170÷192,209×100=27.7・・・ ⇒ 27.7%
| 従業員数 | 美容業 | 理容業 |
|---|---|---|
| 1~5人 | 50.5% | -0.4% |
| 6~20人 | 50.4% | -0.1% |
| 21~50人 | 51.5% | 0.7% |
| 51人以上 | 51.1% | 1.2% |
| 全体平均 | 50.6% | -0.1% |
※数字(人数)は調査対象となったお店(企業)内の従業員数を表しています。
③「人件費率」分析の例
「理美容業」にて「21~50人」の店舗の場合
自店の過去実績例
前々年 57.2%
前年 53.2%
今年 55.5%
業界平均 55.6%
分析例
→自店値の変化:改善→悪化傾向である。(人件費は低いほど良いので)
業界値との比較:業界値とほぼ同じ値である。
→改善が必要である。(悪化傾向にあるため)
→また、値が上下し「安定していない」ことがわかる。
→「実数分析」を行い、「売上げ」「人件費」のどちらに問題があるのかを見る。
→改善目標を設定(第八回講座にて紹介する予定)し、改善のプロセスをまわす。
④美容室の経営の「安定性」「健全性」を見る
自己資本比率
分析内容:資本全体に対する、自己資本(返却義務のない資金)の割合を示す指標です。
資金的に余裕があるかどうか、つまり、資金繰りの「健全性」がわかります。
優良企業ほど高い値となるのが一般的です。
低いと、結果として負債(借入金など)が多く、金利負担が大きくなります。
計算方法:「資本の部合計(自己資本)」÷「資本合計(総資本)」×100(%)
(例)「表1」からの実数での計算例
(12,327+9,811+12,479)÷230,225×100=15.0・・・ ⇒ 15.0%
| 従業員数 | 美容業 | 理容業 |
|---|---|---|
| 1~5人 | 8.6% | 4.6% |
| 6~20人 | 8.2% | 4.1% |
| 21~50人 | 13.3% | 12.8% |
| 51人以上 | 17.1% | 11.1% |
| 全体平均 | 9.4% | 5.7% |
※数字(人数)は調査対象となったお店(企業)内の従業員数を表しています。
④「安定性・健全性」分析の例
「理美容業」にて「51人以上」の店舗の場合
自店の過去実績例
前々年 9.8%
前年 10.2%
今年 11.5%
業界平均 11.1%
分析例
→自店値の変化:改善傾向である。
業界値との比較:業界値より良い値である。
→改善は必要ない。(改善傾向にあるため)
→他の「改善が必要」な項目に注力することにする。
→「改善が必要」である場合には、「自己資本」「総資本」の「実数分析」を行います。