第5回 美容室の現状の分析
Ⅱ美容室経営【財務分析の概要】
Ⅱ-ⅰ美容室財務分析とは
「財務分析」とは、財務(会計)的観点からの分析で、決算書(貸借対照表、損益計算書など)分析していくことで、お店(会社)の安全性・収益性・成長性などを分析する手法です。
「財務分析」は自店(自社)の「決算書」を用いて行います。
この分析により美容室自店(自社)の
「収益性」「利益率」「人件費」「安定性」「成長率」「生産性」などについて
問題の有無がわかります。
今回は、このうち「収益性」「利益率」「人件費」「安定性」の分析についてご紹介します。
美容室財務分析とは
決算書
(貸借対照表・損益計算表)
「収益性」「利益率」「人件費」「安定性」(今回ご紹介します)
「成長性」「生産性」・・・今回取り上げません。
などの問題の有無がわかる
Ⅱ-ⅱ 美容室における決算書について
上記の通り、美容室経営をする上で「財務分析」は「決算書」を用いて行います。
この「決算書」の中には、「貸借対照表」「損益計算書」(表1参照)という二種の書式が
定められています(下図参照)。この二種を用いてさまざまな分析を行うことが可能です
今回は、この「決算書」内の各項目数値をもちいて分析を行います。
下記表1は決算書の例として、平成15年度の「洗濯・理容・浴場業」の実際の調査結果を表にまとめたものです。(「中小企業の財務指標(中小企業庁編)」より抜粋)
次ページにてご紹介する具体例においても、サンプルとしてこの表からの計算値を例示しています。
| 科目 | 金額 | 科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| (資産の部) | (負債の部) | ||
| 流動資産 | 47666 | 流動負債 | 53789 |
| 現金・預金 | 20778 | 支払手形・買掛金 | 7169 |
| 受取手形・売掛金 | 10635 | 短期借入金 | 26714 |
| その他 | 16253 | その他 | 19906 |
| 固定資産 | 181658 | 固定負債 | 141819 |
| 有形固定資産 | 154038 | 長期借入金 | 130325 |
| 建物 | 76570 | その他 | 11494 |
| 機械・器具・備品 | 18287 | ||
| 土地 | 57821 | (資本の部) | |
| その他 | 1360 | 資本金 | 12327 |
| 無形固定資産 | 2010 | 法定準備金 | 9811 |
| 投資等 | 25610 | 余剰金 | 12479 |
| 繰延資産 | 901 | (うち当期利益) | 4410 |
| 資産合計 | 230225 | 負債・資本合計 | 230225 |
| 科目 | 金額 |
|---|---|
| 売上高 | 192209 |
| 売上原価 | 70911 |
| 売上総利益 | 121298 |
| 販売費及び一般管理費 | 109418 |
| (うち人件費) | 53170 |
| 営業利益 | 11880 |
| 営業外収益 | 3480 |
| 営業外費用 | 6300 |
| 経常利益 | 9060 |
| 特別利益 | 831 |
| 特別損失 | 2055 |
| 税引前当期純利益 | 7836 |
| 法人税等 | 3426 |
| 当期純利益 | 4410 |
※「中小企業の財務指標(中小企業庁編)」より抜粋

分析を行うことで
美容室経営の「収益性」「利益率」「人件費」「安定性」の
問題の有無がわかる
この「決算書」は、オーナー様からすると、
「税務署に提出するために、毎年作らなければならない面倒な書類」
といったイメージがあるのではないかと思います。
しかし、せっかく毎年作成している書類ですので、分析に利用し、有効活用するべきです!!
Ⅱ-ⅲ 美容室における財務分析の手法
「財務分析」には、大きく2つの手法
- ・比率分析(今回は、こちらをご紹介します)
- ・実数分析
があります。
どちらも、自社(自店)の数値と、業界平均や自社(自店)の過去実績とを比較するかたちで分析を行います。
比率分析と実数分析
比率分析 今回はこちらをご紹介します。
「利益率(売上高÷営業利益)」など、数値の比率を用いる分析法
(例)
利益率 今年度 10%
前年度 15%
前々年度 20%
→減少傾向
実数分析 今回は取り上げません(無意識にやっておられると思います。
「売上高」「経常利益」など、実数の数値を用いる分析
(例)
売上高 今年度 2000万円
前年度 1500万円
前々年度 1000万円
→増加傾向(年500万円のアップ)
→改善の必要性なし(現状を維持し、他の項目を改善します)
Ⅱ-ⅳ 美容室・サロンの財務分析の流れ
「財務分析」は以下の流れで行います。
美容室サロン財務分析の流れ

A 決算書からの比率計算
決算書から、「比率分析」のための比率計算を行います。
(今回は「収益性」「利益率」「人件費」「安定性」の4つ)
B・C 計算結果の比較
Aでの計算結果は、
B「自社(自店)の過去実績値」
C「業界平均値」
との比較を行うのが一般的です。
B 「自店(自社)の過去実績値」との比較
分析項目における自店(自社)の変化を明らかにします。つまり、収益性や利益率などが、
良くなってきている・悪くなってきている・横ばいである、といった変化がわかります。
通常、過去三期(三年)分のデータとの比較を行います。
C 「業界平均値」との比較
分析項目において、自店(自社)が業界内でどういった位置づけにあるのかが把握できます。
また、業種独自の特性(サービス業では人件費がかさむ、など)を把握する意味でも、業界平均を知っておくことは有意義です。
D・E 比較結果からの分析
B・Cでの比較結果から、各項目における分析を行います。
D 「自店(自社)の過去実績」との比較結果からの分析
Bでの比較結果が、過去実績値と比べて
良くなっている場合:その項目は無理に改善する必要はありません。
→傾向を持続させながら、他の「改善が必要」な項目を改善します。
悪くなっている場合:その項目は「問題点」であるといえます。
→「改善が必要」です。
→他の「改善が必要」な項目と、順にまたは並行して改善を行います。
E「業界平均値」との比較結果からの分析
Cでの比較結果が、業界値と比べて
良い値の場合:その項目は「強み」であるといえます。
→良い値を持続させながら、他の「改善が必要」な項目を改善します。
悪い値の場合:その項目は「弱み」であるといえます。
→「改善が必要」です。
→他の「改善が必要」な項目と、順にまたは並行して改善を行います。
※業界平均値よりも良い値であっても、Dが「悪くなっている」場合は「改善が必要」です